起業して会社を設立した時、本当に夢で一杯だった。成功することだけしか頭になかった。これから起こるであろう、数々の試練なんて全く考えもしなかった。本当に勢いだけで起業した、正にド素人だ。誰しもが最初は初心者とは言うが、事前準備は万全にするのが当たり前の話だ。自分の場合は、それすら無かった…
まず最初の試練が起業のための資金。当たり前の話だが、起業するからには当然のごとくお金が必要だ。
- 会社の設立費
- ホームページ制作費
- レンタルオフィス代
- パソコン、その他備品
- 会社が回り出すまでの当座の生活費
などなど。言い出したらキリがない。ド素人なりにも、会社の立ち上げから回るようになるまでには、それなりの資金が必要なことくらいは容易に想像できた。
とはいえ幸いなことに、手持ちの資金はそれなりに預貯金があった。高校卒業から正社員として朝から晩まで働き、土日もほぼ仕事をしていたため、お金を使う暇が無かったのが功を奏した。
今考えるとスーパーブラック企業ではあったが、先輩から良くしてもらっていたこともあり、仕事を覚えることも楽しかったので全く苦ではなかった。
少し脱線したが、ド素人ながらにも会社が回るまでの生活費、仕入れのお金、広告費を考えると、お金が足りなかった。こんな僕でも、手持ちの資金で何とかなるレベルではないことくらいは容易に理解できた。
そんなこんなで考えたのが、融資を受けるということ。
ここでまたド素人ぶりが発揮される。「そうね、銀行から借りればいいじゃん」と簡単に考えていたのだ。会社であれば簡単に融資が受けられると信じていた。空いた口が塞がらない…orz
それでも、「大手は何となくハードルが高そう」ということで、地元の信用金庫へ相談に行くことにした。誰からか、信用金庫は中小企業の味方と聞いていたのだ。しかも自分は若いし、最先端のインターネットビジネスだしという考えもあったので、なんとかなると思った。
いざ地元の信用金庫の窓口へ。
早速融資窓口に行き、会社のこと、ビジネスのことを色々と話し、融資を受けたい旨を相談した。そこで融資担当者より衝撃的な一言を聞くことになる。
「何か担保になるものはありますか?」
んんん???
担保?そう、あたり前のことだが、何の実績もない信用0の会社に対して、簡単に融資してくれるほど金融機関は甘くはない。当時の僕は、お恥ずかしながらそんな知識すらなかった。本当に空いた口が塞がらないというのはこのことだ。
でも残念な話ばかりではなかった。その親切な信用金庫の担当者から思いもよらない助け舟を頂いたのだ。
「市の創業支援を使って保証協会を通して頂ければ融資可能ですよ」
なんと!そんな手があったのか。早速その足で市の創業支援の担当課に向かった。そこでもまだ試練が待ち受けていたとは思いもよらなかった。
その足で向かった市の創業支援の担当者に相談し、創業支援融資を受けるための説明を受けた。そこで提示された条件は3つ。
- 受けたい融資額の50%を自己資金で用意すること
- 事業計画書の提出と面談を複数回受けてパスすること
- 保証協会の面談を受けてパスすること
やはり融資を受けるということは大変だ。一筋縄では行かない。
それでも融資額の50%については、今までの貯蓄で何とか用意することができた。残るは事業計画書の作成と面談をパスすること。面談は何とかなるという漠然とした自信はあったが、事業計画書なんて未知の領域だ。
何をどうすれば良いのか右も左も分からない。
今思うと本当に恥ずかしい…そんな程度の知識で起業しようと考えていたのだから。けれども当時の自分は勢いだけはあった。そこからはもうがむしゃらだった。インターネットや書籍で事業計画書関連の情報を読み漁り、猛烈に勉強した。自慢ではないが、昔から作文は何となく得意だったので書くこと自体に抵抗はなく、そこからは自分の夢を事業計画書に盛り込んだ。
そして第1段階の決戦の日を迎える。そう、事業計画書の提出だ。まずは事業計画書を審査の上、その後市の担当者との面談という流れになる。
たぶん2週間位は待ったのではないだろうか。電話があり、面談日程の調整の連絡だった。何とか書類が通ったようだ。そこからは早かった。トントン拍子に物事が進んだ。
市の担当者の方との数回の面談をパスし、その後保証協会の方との面談を経てようやく融資の承認を取り付けることができた。ド素人の未経験社長でも融資を受けられた瞬間だった。
融資して頂いた額も大層な金額。
当時の担当者が頑張ってくれた、もしくはインターネットサービスが世の中的に凄い感じに捉えられていたので、その波に乗れたのかは定かではない。しかも創業融資には、ありがたいことに支払いの据置期間というものがあるので、1年間は金利のみの支払いで良い。本当にこれは助かる。これで自分にはバラ色の道が用意されているように思えた。本当にそう感じた。
つづく
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